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Vol.24

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              R E I C マ ガ ジ ン  Vol.24       
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  2013.9.2 ━━
 こんにちはREIC事務局です。
 本メールは配信を希望された方、REIC会員の方(前会員の方も含む)、
 REIC主催のイベントにご協力、ご参加いただいた方にお送りしています。

 - INDEX -
■ 特集1 緊急地震速報の『誤報』は防げなかったのか
         解説(山口耕作REIC常務理事) & アンケート実施

■ 特集2 ”災害から命を守るために”

■ REICニュース
   第2回「地震・防災リレーセミナー」を開催しました

   かたやま通信はお休みします                  
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■ 特集 「緊急地震速報の誤報」は防げなかったのか
           解説(山口耕作REIC常務理事)
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8月8日(木)に、奈良県を震源とするM7.8(第1報)の緊急地震速報の誤報が
流れました。その時、皆さんはどのように対応されましたか。日頃から
発令時の行動をイメージして訓練しておくことが必要です。
さて、今回の誤報は防げなかったのでしょうか。
専門的なデータを混じえて、山口耕作REIC常務理事が解説します。

== ◇◆ 解 説 ◆◇ ==
 8月8日午後4時56分に流された緊急地震速報はマグニチュード(M)7.8、
最大震度7でしたが、実際は和歌山県北部で発生したM2.3の微小地震で、
体に感ずる揺れは全く観測されず、誤報でした。
 私は丁度その時、NHKテレビで甲子園の高校野球を視ていました。画面に
緊急地震速報(震央と警報の範囲)が表示され大地震発生と思いましたが、
震央に近い甲子園では試合が続行し、震度速報も発表されないので、
直ぐに誤報と気付きました。

 この誤報で新幹線が停止するなど、社会的反響が大きく、気象庁は謝罪する
ことになりましたが、「緊急地震速報の誤報は起こりうることであり、問題にすべ
きは緊急地震速報の利用方法と利用者の姿勢」と指摘する研究者もおりました。
 気象庁の説明では、実際に起こったM2.3の微小地震と、三重県南東沖に
設置している海底地震計のノイズが重なったことが誤報の原因とされ、警報の
範囲は近畿を中心に関東、甲信越、北陸、東海、中国・四国、伊豆、九州に
及びました。

 今回の「誤報」は緊急地震速報システムが地震を検知してから18.5秒後の
16時56分27.1秒の第1報で発表されました。これまでの緊急地震速報を解析
してみると、地震検知から第1報発表までに5秒以上要した場合は、緊急地震
速報の精度は良くありません。これは、地震波から読み取ったP波到達時刻が
適正でなく、震源計算が短時間に収斂(しゅうれん)しないときに起こります。
今回は和歌山北部で起きた地震のP波と200kmも離れた海底地震計のノイズを
同じ地震のP波として計算したので、第1報の発信に18.5秒も要し、結果が正しく
ないのは当然です。

 なお、この地震(M2.3)は揺れが小さすぎて防災科学技術研究所の強震観測
網(K-NET,KiK-net)では収録されていません。防災科学技術研究所の高感度
地震観測網(Hi-Net)「野上」(*)で震央最寄の地震波形を観察すると、警報
発表時には、地震は殆ど収束していました。このため、気象庁の観測点でも、
警報のMに相応しい振幅と持続時間の地震波は観測されていないはずです。
更に、気象庁が公表した海底地震計記録から、海底地震計が正常でないこと
は一目瞭然です。
 従って、緊急地震速報システムが、①地震検知から第1報発表までの経過
時間、②警報内容と震央周辺観測点のデータの整合性、③地震計データの
正常性等を総合的に判断すれば、類似の誤報は回避できます。

 緊急地震速報は2007年10月1日から運用が始まり、この9月末で満6年を
迎えます。皆さんは、緊急地震速報の現状や、今回の誤報をどの様に
お感じでしょうか?
 利用者は、緊急地震速報に多少の不具合があっても「賢く使いこなして」
防災に役立てる工夫が必要でしょう。気象庁、緊急地震速報関連の企業
や研究者は、緊急地震速報の諸課題を早急に解決しなければなりません。
 なお、地震の見逃し・誤報が無く、あらゆる地震(直下地震・海溝型地震
・長周期地震動)に対応可能な自律型地震警報器(外部情報は一切不要)
は既に市販されています(www.cygnet.co,jp参照)。

* Hi-Net 和歌山県 野上の連続波形画像
http://www.hinet.bosai.go.jp/strace/view.php?orgid=01&netid=01&stcd=N.NKMH&tm=2013080816&comp=&pv=1H&LANG=ja

== ◇◆ アンケートを実施しました ◆◇ ==
 今回の誤報に関して、REICでは会員を対象としたアンケートを実施し、
発令時の行動、対応や具体的な損失等について伺いました。
ご協力いただきました皆さま誠にありがとうございました。
集計結果は近日中にREICホームページにて公表いたします。

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■ 特集2  ”災害から命を守るために”
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== ◇◆ 「特別警報」がスタートしました  ◆◇ ==
 気象庁は、平成25年8月30日(金)0時に「特別警報」の運用を開始しました。
これまで、大雨、地震、津波、高潮などにより重大な災害の起こる恐れが
ある時に、気象庁は警報を発表して警戒を呼びかけてきましたが、実際に
避難する人は極めて少ないのが実情です。この夏のゲリラ豪雨でも、大雨
警報等が発表されていた地域で、多くの犠牲者が出てしまいました。
 今回、新たに運用される「特別警報」は、従来の警報発表基準をはるかに超え、
対象地域では数十年に一度しかないようなる豪雨や大津波等が予想され、
重大な災害の危険性が著しく高まっている場合に発表されます。「特別警報」が
発表され場合は「命を守るために、最善を尽くしてください。」
 なお、従来の気象警報も並行して発表されますが、気象災害が切迫している
状況を伝えていますので、決して「特別警報」出るまでは大丈夫等と思わないで
ください。
 また、「警報」や「特別警報」はNHKのラジオ・テレビ、市町村の防災無線や
広報車等を通じて伝達されますが、気象条件・停電・通信障害・道路の不通等の
理由で、対象者に必ず伝達されるとは限りません。「警報」や「特別警報」が伝達
されない時でも「危険を自ら察知し、自らの命を自ら守る」能力を身に付けることが
大切です。

 災害時には意外な要因で逃げ遅れ、命まで落としてしまうことがあります。
次に、災害心理学から見た「逃げ遅れ」についてご紹介します。

== ◇◆ 「逃げ遅れの心理」 ◆◇ ==
 2003年2月18日に韓国で地下鉄火災があり、198人もの犠牲者が出ましたが、
車内に煙が立ち込めているのに逃げようとしなかった人が大勢いたと言われて
います。 その後、NHKテレビの番組中の実験で、見知らぬ人たち数人を待合室
で待たせ、ソファーの下から発煙装置の煙を出した時の様子が放送されました。
その時も、韓国の地下鉄火災と同様で、人々は不安を感じながら煙が立ち込める
室内にとどまり、 中々逃げようとしませんでした。最終的には最も若い人が席を
立ち、全員が後に続いて 避難したのですが、明らかな逃げ遅れの状態でした。

  被験者が逃げなかった理由を想像すると、 
    ①異常に気づいたが、危険な状況だと思いたくない。
    ②過去の経験から、この程度ならまだ大丈夫だ。
    ③逃げてもカラブリに終わることが多いので損だ(面倒だ)。
    ④真先に逃げるのは格好が悪い。 
  等であろうと思います。

 この状態を災害心理学では「正常性バイアス」と言い、災害時の逃げ遅れの要因
です。 また、若者より老人の方が、避難を決意するまでに時間を要し、逃げ遅れが
起こり易い と言われています。この状況は前述のNHKの実験結果とも附合します。

 「正常性バイアス」による逃げ遅れは東日本大震災や、ゲリラ豪雨などの災害時
にも 多発しています。あらゆる災害からの逃げ遅れを防ぐには、群馬大学の片田
教授が釜石の子供達に教えた「避難の3原則」に従うのが最善です。
   ① 率先避難者たれ 真先に逃げることで、周囲の人々の命も救える。
   ② 前例に囚われるな 災害に上限は無く、前例を上回る場合も多い。
   ③ 最善を尽くせ 指定の避難場所が安全とは限らない。更に安全な場所を
     目指せ。
また、広瀬弘忠著「人はなぜ逃げおくれるのか」(集英社)も参考にしてください。
                            (文責 山口耕作REIC常務理事)

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■ R E I C ニ ュ ー ス
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第2回「地震・防災リレーセミナー」を開催しました
          只今 第3回の参加受付中です!!

REICでは、防災意識の向上と幅広い防災・減災対策の推進に資する目的で
「地震・防災リレーセミナー」を、地震予知総合研究振興会(ADEP)と共催で
定期的に開催しています。
その第2回が、8月23日(金)17:30~19:00、ADEPの会議室にて開催されました。
講師は(独)防災科学技術研究所 兵庫県耐震工学研究センター長 梶原浩一氏、
講演題目は「E-ディフェンスによる構造物実大実験でわかったこと」です。

世界最大の実大構造物振動破壊実験施設「E-ディフェンス」が平成17年兵庫県
三木市に完成し、木造家屋、鉄筋コンクリート建物、鉄骨構造物等を実際に振動
台上に構築し、過去の地震動を再現した様々な破壊実験が行われました。講演は
動画中心の大変迫力があるものでした。また、セミナーの模様はインターネットでも
配信、遠隔地の会員の方が視聴しました。

第3回は、9月20日(金)17:30~19:00、会場は同じくADEPの会議室で開催します。

講師はADEP副首席主任研究員の衣笠善博氏。
講演題目は「活断層について」です。活断層に関する基本的な定義や認識の問題
から、調査結果の活用についてお話頂く予定です。

定員30名(先着順)、参加費はREIC 1会員あたり2名まで無料、会員3人目以降
および非会員は1名2,000円です。満員になり次第〆切らせて頂きます。
参加お申込はREIC事務局まで。

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発行日:月1回・毎月上旬発行(休刊:GW、年末年始など)
発行開始月:2011年10月

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